SAA マイグレーション戦略 6R(7R)の理解|リホスト・リプラットフォーム・リファクタを要件文で即断する
AWS SAA-C03 でオンプレミスから AWS への移行(マイグレーション)は、コスト最適化・弾力性・セキュアな設計を横断して問われる頻出テーマだ。本記事は移行戦略の 6R——Rehost(リホスト)・Replatform(リプラットフォーム)・Repurchase(リパーチェス)・Refactor(リファクタリング)・Retire(リタイア)・Retain(リテイン)——を「移行にかける労力(そのまま⇔作り直す)」と「得られるクラウド最適化(低⇔高)」の2軸で体系化する。さらに現在 AWS が採用する 7R(Relocate 追加)、移行を支える Application Migration Service・DMS・DataSync・Snow Family、3フェーズ移行プロセス(評価→準備→移行と最新化)まで、SAA 本番で要件文のキーワードから正解の戦略を一意に引くための反射を作る。結論は「移行問題は戦略名の暗記ではなく、労力と最適化のトレードオフを2軸で読む」こと。
移行戦略の問題を「とりあえず EC2 に持っていく(リホスト)」で片づけようとすると、コスト最適化や運用負荷削減を問う設問で足をすくわれる。 SAA-C03 でオンプレミスから AWS への移行(マイグレーション)は、コスト最適化(ドメイン4)・弾力性(ドメイン2)・セキュア設計(ドメイン1)を横断して顔を出す頻出テーマだ。だが問われるのは「戦略名の暗記」ではなく、どれだけの労力をかけ、その見返りにどれだけクラウドの恩恵を引き出すかというトレードオフの判断である。攻略の鍵は、6つの移行戦略(6R)を「移行にかける労力(そのまま⇔作り直す)」と「得られるクラウド最適化(低⇔高)」の2軸マップに畳み、要件文のキーワード——『最短で移行』『DB の運用負荷を下げたい』『クラウドネイティブに作り直す』『使っていないサーバー』——から正解の R を一意に引く反射を作ること。本記事では、SAA 本番でそのまま選択肢を絞れる粒度で、6R(および現在の 7R)と移行を支える AWS サービスを整理する。読み終えれば、「最も適切な移行戦略はどれか」という問いに、迷わず正解を当てられるようになる。
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📑 目次
- 結論:移行戦略は「労力 × 最適化」の2軸で解く
- 6R 前半:Rehost・Replatform・Repurchase(持っていく系)
- 6R 後半:Refactor・Retire・Retain(作り直す/やめる系)と 7つ目の Relocate
- 移行を支える AWS サービス(MGN・DMS・DataSync・Snow)
- 移行プロセス 3フェーズ(評価→準備→移行と最新化)
- 頻出ひっかけパターンと打ち手の整理
- 次のアクション チェックリスト
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1. 結論:移行戦略は「労力 × 最適化」の2軸で解く
SAA-C03 の移行戦略問題を最短で解く骨格は、**「要件文が『移行にかける労力の少なさ(スピード)』を優先しているのか、『クラウド最適化の深さ(コスト削減・運用負荷削減・スケーラビリティ)』を優先しているのかを見極め、その位置に対応する R を選ぶ」**ことだ。これが本記事の結論である。
理由は明快で、6R はどれもこの2軸マップ上の異なる座標を占める道具だからだ。Rehost(リホスト)は「労力ほぼゼロ・最適化も浅い」左下、Refactor(リファクタリング)は「労力最大・最適化も最大」右上、その間に Replatform が位置する。要件文が「とにかく速く・最小の変更で」と言えばマップ左下(Rehost)へ、「運用負荷を下げ、マネージドの恩恵を得たい」と言えば右へ(Replatform〜Refactor)ずれていく。つまり要件文のキーワードがマップ上の座標を指し示し、座標が正解の戦略を一意に決める構造になっている。
具体例で見よう。「データセンター閉鎖の期限が迫り、最短でアプリを AWS に移したい」——スピード優先だから Rehost(リフト&シフト)。「移行のついでに、自前管理の MySQL を運用負荷の低い RDS に載せ替えたい」——小さな最適化を伴うから Replatform。「モノリスを分解してサーバーレスに作り直し、スケーラビリティを最大化したい」——大きな作り直しだから Refactor。「もう誰も使っていないサーバーが見つかった」——Retire(廃止)。ここで「移行=とりあえず EC2 に載せる」と短絡すると、コスト最適化や運用負荷を問う設問で誤答する。2軸マップ上のどこを問われているかで解く——この一点が移行戦略問題の攻略法だ。
2. 6R 前半:Rehost・Replatform・Repurchase(持っていく系)
まず「既存アプリを AWS に持っていく」方向の3つの R を、労力の小さい順に押さえる。
R1:Rehost(リホスト/リフト&シフト)— そのまま載せ替える
アプリケーションを一切改変せず、オンプレミスのサーバー構成をそのまま AWS(主に EC2)へ移す戦略。「リフト&シフト(Lift and Shift)」とも呼ばれる。
- メリット:移行が最速・最小リスク。アプリの改修が不要なので、大量サーバーを短期間で移せる。
- デメリット:クラウドのマネージド機能やスケーラビリティの恩恵は薄い(あくまで「載せただけ」)。
- 代表シーン:データセンター閉鎖の期限が迫る/まず AWS 上に移してから段階的に最適化したい。
- 主なツール:AWS Application Migration Service(MGN)(サーバーを自動で EC2 へ複製)。
R2:Replatform(リプラットフォーム/リフト・ティンカー&シフト)— 少し手を入れて載せる
アーキテクチャの根幹は変えず、一部だけをマネージドサービスに載せ替えて最適化する戦略。「リフト・ティンカー&シフト」とも言う。
- 典型例:自前管理の DB を Amazon RDS や Aurora に載せ替える/OS・ミドルウェアのバージョンアップ/ファイルサーバーを S3 に置き換える。
- メリット:小さな変更で運用負荷削減・可用性向上などのクラウド恩恵を得られる。Rehost と Refactor の中間で、コスパが良い。
- SAA での狙われ方:「移行を機にDB の運用負荷(バックアップ・パッチ)を下げたい」→ EC2 上の DB ではなく RDS へ Replatform が正解。
R3:Repurchase(リパーチェス/ドロップ&ショップ)— 別製品・SaaS に乗り換える
既存アプリを捨て、別の製品(多くは SaaS)に乗り換える戦略。「ドロップ&ショップ」とも呼ぶ。
- 典型例:自前の CRM をやめて Salesforce に/自前メール基盤をやめて Amazon SES やマネージド SaaS に/ライセンス製品をサブスクリプション型へ。
- メリット:保守から解放され、ライセンスコストを変動費化できる。
- SAA での狙われ方:「既存の商用ソフトを保守せず SaaS に切り替えたい」といった文脈で登場する。
| 評価項目 | 戦略 推奨 | 移行の労力 | クラウド最適化 | 移行スピード |
|---|---|---|---|---|
| Rehost(リホスト) | 最小(無改修) | 低(載せただけ) | 最速 | |
| Replatform(リプラットフォーム) | 小(一部変更) | 中(マネージド化) | 速い | |
| Repurchase(リパーチェス) | 中(乗り換え) | 中(SaaS化) | 中 | |
| Refactor(リファクタリング) | 最大(作り直し) | 最高(クラウドネイティブ) | 遅い | |
| Retire(リタイア) | —(廃止) | —(対象外化) | — | |
| Retain(リテイン) | —(据え置き) | —(現状維持) | — |
3. 6R 後半:Refactor・Retire・Retain と 7つ目の Relocate
R4:Refactor / Re-architect(リファクタリング)— クラウドネイティブに作り直す
アプリを根本から再設計し、クラウドネイティブなアーキテクチャに作り替える戦略。最も労力がかかるが、最も深いクラウド最適化が得られる。
- 典型例:モノリスを分解して Lambda + API Gateway + DynamoDB のサーバーレス構成に/ECS・EKS でコンテナ化してマイクロサービス化。
- メリット:スケーラビリティ・弾力性・コスト効率が最大化。サーバーレス設計の恩恵をフルに受けられる。
- デメリット:時間・コスト・スキルの要求が最も高い。ビジネス上の強い動機(大幅なスケール要件・機能追加)があるときに選ぶ。
R5:Retire(リタイア)— 廃止する
使われていない・不要になったアプリやサーバーを、移行せずに廃止する戦略。移行プロジェクトの棚卸しで「実は誰も使っていなかった」システムを見つけ、コストを削減する。移行対象を減らすこと自体が最適化になる。
R6:Retain(リテイン/リビジット)— そのまま残す
今は移行せず、オンプレミスに据え置く戦略。「リビジット(後で見直す)」とも呼ばれる。
- 典型例:法規制・データ主権で移行できない/減価償却が終わっていない設備/移行の投資対効果が薄いレガシー。
- ポイント:これも立派な「戦略的判断」。SAA では「まだ移行すべきでないワークロード」の選択肢として登場することがある。
4. 移行を支える AWS サービス(MGN・DMS・DataSync・Snow)
戦略(どの R か)を決めたら、次はそれを実現するツールだ。SAA では「この移行要件に最適なサービスはどれか」が単体で問われることも多い。役割を取り違えないよう、用途で区別する。
- AWS Application Migration Service(MGN):サーバー(OS・アプリ丸ごと)を EC2 へ自動複製する。Rehost の主役。旧 CloudEndure Migration の後継。
- AWS Database Migration Service(DMS):データベースを移行する。稼働中 DB を止めずに継続レプリケーション(CDC)でき、異種 DB 間(例:Oracle → Aurora)は Schema Conversion Tool(SCT/DMS SC)と組み合わせる。Replatform の DB 移行で頻出。
- AWS DataSync:大量のファイル/オブジェクトデータをオンプレ ↔ AWS(S3・EFS・FSx)間で高速・自動転送する。ネットワーク経由の継続的なデータ移行に向く。
- AWS Snow Family(Snowball / Snowcone):**ネットワークでは現実的でない超大容量(TB〜PB 級)**を、物理デバイスに書き出して郵送する「オフライン移行」。回線が細い/データが巨大なときの選択肢。
- AWS Direct Connect / Site-to-Site VPN:移行中・移行後のハイブリッド接続。安定帯域が要るなら Direct Connect、即時・低コストなら VPN。
- AWS Migration Hub:複数ツールの移行状況を一元的に可視化・追跡するダッシュボード。
5. 移行プロセス 3フェーズ(評価→準備→移行と最新化)
AWS の移行プロセス(Migration Acceleration Program の考え方)は、大きく3つのフェーズで進む。SAA では「移行のどの段階で何をするか」の順序が問われることがある。
- 評価(Assess):現状のポートフォリオを棚卸しし、各アプリに 6R のどれを当てるかを判断する。移行の準備状況・コスト・ビジネス価値を見極めるフェーズ。ここで **Retire(廃止)**対象も洗い出す。
- 準備(Mobilize):移行基盤(ランディングゾーン=Organizations・ネットワーク・セキュリティの土台)を整え、パイロット移行でノウハウを蓄積する。セキュアな土台をこの段階で作る。
- 移行と最新化(Migrate & Modernize):実際に各アプリを選んだ R で移行し、移行後にさらなる最適化(モダナイゼーション)を進める。
6. 頻出ひっかけパターンと打ち手の整理
SAA 本番でそのまま判断できるよう、移行戦略の「要件キーワード → 正解」の対応を整理する。
| 評価項目 | 要件文のキーワード | 正解 | 理由 |
|---|---|---|---|
| データセンター閉鎖・最短で移行・無改修 | Rehost(MGN) | スピード最優先・改修不要 | |
| 移行を機に DB の運用負荷を下げたい | Replatform(RDS/Aurora) | 小変更でマネージド化 | |
| 自前製品をやめて SaaS に乗り換え | Repurchase | 保守解放・変動費化 | |
| クラウドネイティブに作り直し・最大スケール | Refactor | 再設計で最適化最大 | |
| 誰も使っていないサーバー | Retire | 廃止でコスト削減 | |
| 規制・償却で今は動かせない | Retain | 戦略的に据え置き | |
| 稼働中 DB を止めず異種 DB へ移行 | DMS(+SCT) | 継続レプリケーション | |
| 大量ファイルをネットワークで継続同期 | DataSync | オンライン高速転送 | |
| PB 級・回線が細い・郵送が速い | Snow Family | オフライン物理移送 |
7. 次のアクション チェックリスト
移行戦略 6R を、今日からの学習に落とし込むための具体アクションをまとめる。
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- Site-to-Site VPN の設定と Direct Connect との違い — 低コストな接続オプション
- CLF 試験:Well-Architected Framework 6 つの柱 — 移行後の設計品質の指針
9. 関連サイト
AWS 公式
- AWS クラウド移行(公式)
- 移行戦略について — AWS 規範ガイダンス(公式)
- AWS Application Migration Service(公式)
- AWS Database Migration Service(公式)
- AWS DataSync(公式)
- AWS Snow Family(公式)
- AWS Migration Hub(公式)
- AWS Certified Solutions Architect – Associate(公式)
- SAA-C03 試験ガイド(公式 PDF)